自用の建物及びその敷地としての鑑定評価(実測と登記が違うケース)奈良県中和地区

自用の建物及びその敷地としての鑑定評価(実測と登記が違うケース)奈良県橿原市

不動産鑑定評価ケーススタディー(この案件の概要)

奈良県橿原市

奈良県中和地区(大和高田市、橿原市、桜井市、香芝市、御所市、葛城市など)の戸建住宅の鑑定評価を行いました。依頼目的は、売買の参考のためであり、同じ会社の上司の戸建住宅を賃借していた同じ会社の方が、当該戸建住宅を買い取る場合の適正な時価の評価を求められたものです。

建物が割高な家賃で賃貸に供されていましたが、このような戸建住宅の売買で、貸家及びその敷地で評価するのは、当事者の合理的な意思で適当ではなく、当事者に確認の上、自用の建物及びその敷地として鑑定評価を行いました。

類型に「として」を入れる場合、もともとは、自用の建物及びその敷地ではないが、自用の建物及びその敷地として評価しますという場合に使います。地価公示の土地評価は、「更地として」の評価であり、土地評価の場合は、使われることが多い表現です。

なお、この物件は、当事者の当初の話し合いで、登記数量で売買することが決まっていましたが、登記数量と実際の宅地部分の面積が異なる可能性の高い物件だったので、次のようなメッセージを伝えました。

鑑定評価の条件により、登記数量に基づき鑑定評価を行っているが、本件不動産の竣工時点の丈量図の地積、建築計画概要書に記載されている地積は・・・㎡であることから、地積測量図に基づく登記数量が現況宅地部分の地積と乖離している可能性が考えられます。 なお、・月・・日に現地で辺長を計測したところ、法務局の地積測量図の辺長ではなく、丈量図の辺長と近似していることを確認した。

推測では、法務局の地積測量図を作成後に敷地の一部について道路提供があったと思われる。 登記数量により売買を行うことを合意して取引を行うことを不動産市場では多く行われていますが、現況宅地部分の地積を明確にして、当該現況宅地数量で売買を行うことが選択肢として考えられますので、売買で対象となる土地面積について双方で話し合いを行って頂ければ幸いです。

住宅地域

住宅地域の定義

住宅地とは住宅地域のうちにある土地を言い、住宅地域とは、居住等の用に供される建物、構築物等の敷地の用に供されることが合理的と判断される地域を言います。この住宅地域を細分すると、標準的な住宅の建ち並んでいる標準住宅地域、広い敷地に比較的豪華な住宅が建てられている優良住宅地域や、狭少な住宅やアパート、店舗などか混在している混在住宅地域などがあります。

住宅地域の地域要因

住宅地域の地域要因の一部を例示すれば、次のとおりです。

  • 日照等の気象
  • 街路の幅員、系統及び連続性
  • 最寄り駅との距離
  • 商業施設との位置関係
  • 上下水道等の供給処理施設の状態
  • 災害の発生の危険性
  • 公害の発生の程度
  • 各画地の規模や配置(区画整然としているか)
  • 街並みの状態
  • 眺望、景観等の良否
  • 土地利用に関する行政上の規制等 

住宅地域の個別的要因

住宅地域の個別的要因は、上記と多くが重なり、それ以外に例示すれば、次のとおりです。

  • 間口、奥行
  • 地積、形状等
  • 道路高低差
  • 角地等の接面街路との状況
  • 上下水道、ガス等の引き込みの状況
  • 埋蔵文化財及び地下埋設物の有無並びにその状態
  • 土壌汚染の有無及びその状態

建物に関する個別的要因

建物の個別的要因の一部を例示すれば、次のとおりです。  

  • 新築、増改築等時期
  • 床面積、建物の高さ、構造等
  • 設計、設備等の良否
  • 施工の質と量
  • 耐震性
  • 維持管理の状態
  • アスベスト、PCBなど有害な物質の使用の有無

建物及びその敷地に関する個別的要因

建物及びその敷地に関する個別的要因の一部を例示すれば、次のとおりです。

  • 敷地内における建物、庭等の配置
  • 建物と敷地の規模の対応関係
  • 修繕計画・管理計画の良否
  • 賃貸されている場合は、さらに、賃貸経営管理の良否(賃借人の状況、賃貸借契約の内容、貸室の稼働状況、修繕費用等の負担)

不動産鑑定評価基準:自用の建物及びその敷地

自用の建物及びその敷地とは、建物所有者とその敷地の所有者とが同一人であり、 その所有者による使用収益を制約する権利の付着していない場合における当該建物及びその敷地をいう。

不動産鑑定評価基準、国土交通省

土地の所有者がその土地の上に建っている建物も所有 していて、その所有者による使用収益を制約する権利の付いていないい場合を言います。第三者に賃貸していない場合、所有者が現在も使用している場合、分譲の建売住宅のように空家の状態のものも含まれます。

 つまり、その土地と建物の所有者が、自分が使用したいと思えば自由に使用出来る状態であり、これから賃貸に出しと思えば、賃貸に出来る、建物を解体し更地にしようと思えば更地にできるような、建物及びその敷地を言います。

不動産鑑定評価基準:自用の建物及びその敷地の鑑定評価

自用の建物及びその敷地の鑑定評価額は、積算価格、比準価格及び収益価格を関連づけて決定するものとする。

なお、建物の用途を変更し、又は建物の構造等を改造して使用することが最有効使用と認められる場合における自用の建物及びその敷地の鑑定評価額は、用途変更等を行った後の経済価値の上昇の程度、必要とされる改造費等を考慮して決定する ものとする。

また、建物を取り壊すことが最有効使用と認められる場合における自用の建物及 びその敷地の鑑定評価額は、建物の解体による発生材料の価格から取壊し、除去、 運搬等に必要な経費を控除した額を、当該敷地の最有効使用に基づく価格に加減して決定するものとする。

不動産鑑定評価基準、国土交通省

戸建住宅はあまり関係ないですが、空室の多い事務所ビルをマンションやホテル、トランクルームに改造あるいは改装することが行われるようになりました。建物の現在の用途が環境に適合しなくなったとき、用途変更をしたり、建物の構造、設備を変えたら、その物件の経済的な価値が上昇することが考えられます。その場合、用途などが変更された後の状態で不動産の価額を求め、用途変更・構造変更等に要する費用等を控除して鑑定価額を求める考えもあります。

また、建物が老朽化し、建物と環境の適合の状態が劣る場合や、容積率の消化が悪い時は、用途変更やリフォーム等をするより建物を解体し、更地にしたほうがベストな活用なことも考えられます。この場合、建物を解体し更地にすることにより、最有効使用の建物が建てられるようになりますので、更地価格から解体費用相当額を控除して価額を求めます。

まとめ

類型に「として」を入れる場合、もともとは、自用の建物及びその敷地ではないが、自用の建物及びその敷地として評価しますという場合に使う表現です。この自用の建物及びその敷地の鑑定評価は、土地価格+建物価格という基本的な求め方以外にも、リニューアル、解体など、その物件の最有効使用に基づき、様々な求め方があります。

このホームページの運営者

コメントを残す